症例報告
脊髄損傷症例に合併した胃癌手術後の管理
高橋 健, 中村 慶春, 内田 英二, 柏原 元, 李 栄浩, 宮下 正夫, 田尻 孝, 笠井 源吾*
日本医科大学大学院医学研究科臓器病態制御外科学, 波崎済生病院内科*
医療技術などの進歩に伴って脊髄損傷患者の生命予後は改善し高齢化が進んでいる.これに伴い悪性腫瘍併発例の報告が増加しているが,消化器癌併発例の報告はほとんど認められない.今回,我々は脊髄損傷患者の胃癌併発例を経験したので報告する.症例は60歳の男性で,昭和46年に脊髄損傷受傷,平成14年6月に腹痛および黒色便が出現した.上部消化管内視鏡を施行し胃体中部前壁の胃癌と診断されたため胃全摘術を施行した.術直後より減圧管からの排液量が多く,第3病日からは排便が連日認められたにもかかわらず減圧管排液量は漸増し(最大で825 ml/日),上部と下部の消化管蠕動運動の乖離が認められた.しかし胃管の留置期間を延長し,適宜,腸管運動促進剤を投与しながら経口摂取量を調節していくことで合併症なく第40病日に退院となった.脊髄損傷患者に腹部手術を施行する際は,脊髄損傷の病態生理を理解し注意深い術後管理が必要であると考えられた.
索引用語
spinal cord injury, gastric carcinoma
別刷請求先
高橋 健 〒113-8603 東京都文京区千駄木1-1-5 日本医科大学大学院医学研究科臓器病態制御外科学(第1外科)
受理年月日
2004年6月30日
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