膵体尾部低形成症を伴うvon Recklinghausen病に合併した十二指腸乳頭部癌の1切除例

飛田　浩司, 山崎　一馬, 児玉　多曜, 森川　丘道, 外浦　功, 松永　晃直, 川村　功, 落合　武徳^＊

栃木厚生連下都賀総合病院外科, 千葉大学医学研究院先端応用外科^＊

　膵体尾部低形成症と総胆管腹側を門脈が走行する破格を伴うvon Recklinghausen病（以下，R病）に合併した十二指腸乳頭部癌の1切除例を経験したので報告する．乳頭部癌とR病との合併報告は本症例が14例目と比較的まれである．　R病と膵体尾部低形成症や血管走行異常との合併報告例はなく，その関連については不明である．症例は57歳の女性で，十二指腸乳頭部癌に対し，幽門輪温存膵頭十二指腸切除，D3郭清を施行した．腫瘍は大きさ3.0×1.8 cmの潰瘍腫瘤型であった．病理組織学的には中分化型腺癌，stageIIIの診断であった．術後QOLを重視し，膵性糖尿病必発の全摘を避け，膵組織を一部残した．膵組織が特異な血流支配であったため，術後十分な血流維持をはかれず，虚血による膵液瘻の治療に難渋した．患者は術後2年で再発死した．膵体尾部低形成症に合併した乳頭部癌の進行例には膵液瘻の可能性がなく，根治性を重視した膵全摘を選択すべきと考える．

索引用語
carcinoma of the ampulla of Vater, von Recklinghausen's disease, hypoplasia of pancreatic body and tail

別刷請求先
飛田　浩司　260-8670　千葉市中央区亥鼻1-8-1　千葉大学医学研究院先端応用外科

受理年月日
2004年10月19日

PDFを閲覧するためにはAdobe Readerが必要です