症例報告
門脈ガス血症発生の初期像が示された回腸壊死の1例
坂本 千尋, 高 済峯, 蜂須賀 崇, 小山 文一, 長尾 美津男, 樫塚 久記, 頼木 領, 中島 祥介
奈良県立医科大学消化器・総合外科
患者は59歳の男性で,非ホジキンリンパ腫に対する化学療法中に強い腹痛を訴え次第に増強したために,翌日朝に外科紹介となった.紹介前の単純CTでは,肝辺縁に約1 mmのガス像を疑う透亮像を認めたが他の腹腔内病変を指摘しえなかった.造影CTにて再検したところ,肝辺縁と回腸壁内にガス像を認めたため,門脈ガス血症を伴う腸管壊死と診断し緊急手術を施行した.手術所見では回腸壊死であり,壊死部を含めた回腸を切除した.術後経過は良好であり,第13病日のCTにて門脈内ガスは消失し,第15病日に外科退院となった.門脈ガス血症を伴う腸管壊死は極めて予後不良とされている.CTにて門脈ガス血症の初期像を捉え,速やかに手術を施行したことにより良好な経過が得られたと考えられた.また,化学療法による腸管粘膜の障害が門脈ガス発生に関与したものと考えた.
索引用語
hepatic portal venous gas, ileal necrosis, chemotherapy
別刷請求先
坂本 千尋 〒634-8522 橿原市四条町840 奈良県立医科大学付属病院消化器・総合外科
受理年月日
2004年10月19日
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