症例報告
両下肢深部静脈血栓症に対し予防的に下大静脈フィルターを挿入したS状結腸癌の1手術例―大腸癌手術例に対する下大静脈フィルター挿入本邦報告例の検討―
大畑 昌彦, 丸山 正董, 齊藤 直人, 石井 博, 大堀 真毅, 古川 俊隆, 戸倉 康之, 多賀 誠*, 小山 勇*
丸山記念総合病院外科, 埼玉医科大学消化器一般外科(I)*
症例は76歳の女性で,食欲不振,発熱で入院し,血管確保のため左大腿静脈にカテーテルが挿入された.CTで肝膿瘍を認め,経皮的ドレナージを施行した.また,総胆管結石を疑い,内視鏡的に乳頭括約筋切開術を施行した.その後からイレウスを生じ,大腸内視鏡検査で肛門から15 cmに2型の腫瘍を認めた.さらに,左下肢の浮腫,腫脹,色調変化,疼痛を認め,CTで両下肢深部静脈血栓症が検出された.手術時の肺塞栓症が危ぐされ,術前に下大静脈フィルターを挿入した.周術期に肺塞栓症などの合併症は見られず順調に回復した.深部静脈血栓症を合併した症例が,ことに骨盤内操作を必要とする消化器癌を有している場合,肺塞栓症予防の目的で下大静脈フィルター挿入は,有効な術前処置と考えられた.今回,大腸癌手術症例に対する下大静脈フィルター挿入の本邦報告例を検討し,適応,効果などを分析した.
索引用語
deep venous thrombosis, vena cava filter, colon cancer
別刷請求先
大畑 昌彦 〒339-8521 岩槻市本町2-10-5 丸山記念総合病院外科
受理年月日
2004年10月19日
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