症例報告
膵リンパ上皮嚢胞切除後の残存膵に膵癌を発症した1例
重田 匡利, 岡村 啓二, 藤田 雄司, 河内 康博, 宮下 洋
社会保険徳山中央病院外科
患者は58歳の男性で,腹痛を主訴に受診,精査にて膵尾部の嚢胞性病変が認められた.血中CA19-9が高値であり,またCT・血管造影より嚢胞腺癌などの膵臓の腫瘍性嚢胞が疑われた.膵体尾部切除が施行され,その結果リンパ上皮腫と判明した.それから1年後にCA19-9の再上昇および残存膵の充実性腫瘤,および嚢胞性病変を認め内視鏡下針生検が施行された.その結果,膵癌と診断され残存膵全摘が施行された.膵臓のリンパ上皮嚢胞は扁平上皮に覆われる嚢胞で,膵嚢胞としての発生はまれである.そのため,発生機序および病的意義はいまだはっきりしていない.リンパ上皮嚢胞と膵臓の悪性腫瘍が合併した報告は著者らが調べえた範囲では本症例以外に認めない.膵癌を併発した貴重な症例を経験したので報告する.
索引用語
lymphoepithelial pancreatic cyst, pancreatic cancer
別刷請求先
重田 匡利 〒755-8505 宇部市南小串1-1-1 山口大学医学部第1外科
受理年月日
2004年11月30日
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