症例報告
食道転移を来した肺癌の1例
石山 哲, 出江 洋介, 葉梨 智子*, 吉田 操**
東京都立駒込病院外科, 東海大学東京病院外科*, 東京都立墨東病院**
症例は80歳の女性で,嚥下障害,体重減少を主訴に来院した.胸部CTにて左肺下葉に胸膜陥入像を伴う腫瘤影を認め,肺胞洗浄細胞診(BAL)にて腺癌と診断された.また,上部消化管造影,および内視鏡検査で胸部食道に,粘膜面に変化のない全周性狭窄を認め,超音波内視鏡下穿刺吸引細胞診(EUS-FNAB)を施行したところ,BALと同様の細胞を認め,腺癌が強く疑われた.対側肺転移,食道転移を有する原発性肺癌,StageIVと診断した.80歳と高齢であり,呼吸機能,腎機能の低下を認めたため,姑息的治療を選択し,経口摂取を可能にするための食道ステントを挿入し退院となった.悪性腫瘍の血行性,リンパ行性食道転移は比較的まれであり,自験例を含め19例の報告があるのみである.今回,我々はEUS-FNABにて診断しえた,肺癌の食道転移を経験したので文献的考察を加え報告する.悪性腫瘍の血行性,リンパ行性食道転移は比較的まれである.症状を有することが少なく,剖検にて発見されることが多い.術前診断しえた症例は自験例を含め19例の報告を認めるのみである.今回,我々は超音波内視鏡下穿刺吸引細胞診(fine needle aspiration biopsy under endoscopic ultrasonography:以下,EUS-FNABと略記)にて診断しえた肺癌の食道転移を経験したので報告する.
索引用語
esophageal metastasis, lung cancer, fine needle aspiration biopsy
別刷請求先
石山 哲 〒105-8461 港区西新橋3-25-8 東京慈恵会医科大学外科
受理年月日
2004年12月17日
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