症例報告
CTにて術前診断しえた大腿ヘルニア内壊疽性虫垂炎の1例
大迫 智, 臼井 智彦*, 西田 智樹*, 城野 晃一*
綾部市立病院外科, 舞鶴医療センター外科*
症例は90歳の女性で,右鼠径部腫瘤と局所の炎症症状にて当科に紹介された.初診時,右鼠径部に6 cm大の弾性軟の腫瘤を認め,右鼠径部から大腿内側の皮膚に発赤を認めた.骨盤部造影CTにて,右大腿ヘルニア嚢内に盲端に終わる腸管を認め,その周囲に膿瘍形成が疑われたため,大腿ヘルニア内壊疽性虫垂炎と診断し,手術を施行した.鼠径部からアプローチし,ヘルニア嚢内の膿瘍をドレナージした後,同一術野で虫垂切除術とMcVay法による大腿ヘルニア根治術を行った.術後,創感染を合併したが保存的に治癒した.ヘルニア内虫垂炎はまれな病態であり,ヘルニア門での虫垂の締め付けにより虫垂炎が発症する.症状としては炎症がヘルニア内に限局することにより古典的な虫垂炎の身体所見が出ず,鼠径部腫瘤・腫脹と皮膚症状が前面に出るため,診断が困難である.正確な術前診断にはCTでの画像診断が有用である.治療は,全身状態が悪化する前に速やかに外科的治療を行うことが望ましい.
索引用語
femoral hernia, appendicitis, computed tomography
別刷請求先
大迫 智 〒623-0011 綾部市青野町大塚20-1 綾部市立病院外科
受理年月日
2004年12月17日
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