症例報告
妊娠中に診断された肝転移を伴う遺伝性非ポリポーシス大腸癌の1例
池永 雅一, 関本 貢嗣, 山本 浩文, 池田 正孝, 三宅 泰裕, 金 柄老, 能浦 真吾, 永野 浩昭, 左近 賢人, 門田 守人
大阪大学大学院消化器外科学
症例は40歳の妊婦(22週5日)で右季肋部痛を主訴に来院した.家族歴に父が59歳時直腸癌,姉が45歳時に大腸癌と診断されている.遺伝性非ポリポーシス大腸癌(Amsterdam criteria II)の診断基準に合致した.右季肋部痛にて腹部超音波検査を施行したところ肝腫瘤を指摘された.精査にて多発肝転移を伴うS状結腸癌と診断した(妊娠23週2日).本人・家族と治療方針につき相談した結果,胎外生活が可能となる妊娠28週まで待ったうえで癌治療を行うこととした.待機中にイレウス症状が進行し,母体の全身状態も悪化したために緊急手術を施行した(妊娠24週4日).術直後に胎児死産となり,また術後13日目に多臓器不全にて死亡した.妊娠に合併した悪性腫瘍の治療に際して,妊婦に関わるさまざまな因子を考慮し治療法の選択をすべきである.
索引用語
colorectal cancer, pregnancy, hereditary nonpolyposis colorectal cancer
別刷請求先
池永 雅一 〒540-0006 大阪市中央区法円坂2-1-14 国立病院機構大阪医療センター外科
受理年月日
2005年1月26日
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