原著
肝癌細胞に対するmda-7/IL-24の腫瘍抑制効果とシグナル伝達
加藤 久美子, 佐伯 知行, 山崎 洋次
東京慈恵会医科大学外科学講座
はじめに:mda-7/IL-24はIL-10ファミリーに属するサイトカインである.mda-7を発現したアデノウイルスベクター(Ad-mda-7)を用いて癌細胞にmda-7遺伝子を導入すると癌特異的に増殖抑制とアポトーシスを誘導することがさまざまな癌細胞で証明されている.本実験ではAd-mda-7が肝癌細胞株に及ぼす腫瘍抑制効果およびシグナル伝達機構をin vitroで検討した.方法:Ad-mda-7をHepG2(p53野生型)およびHep3B(p53欠失型)に感染させ,免疫染色およびWestern blot解析を用いて細胞内MDA-7の発現を検出し,trypan-blue染色法で生存曲線を作成した.さらに,Ad-ma-7感染後に発現しているアポトーシス関連蛋白(PARP,CASPASE,BAX)およびJAK/STAT蛋白をWestern blot解析で検出した.結果:両細胞においてAd-mda-7感染72時間以後に増殖抑制を有意に認めた(p<0.05).感染72時間以後に両細胞でMDA-7の発現およびcleaved-PARPの増強を検出した.BAXの発現はHepG2で増加していたがHep3Bでは増加を認めなかった.cleaved-caspase8の発現は両細胞で増強し,p-STAT3はHepG2で増強していた.結論:mda-7/IL-24は効率的に肝癌細胞株にアポトーシスを誘導した.その誘導経路はp53およびBAXに非依存的でありcaspase活性化経路によると考えられた.STAT3もまたアポトーシスに関与していると考えられた.
索引用語
apoptosis, mda-7, IL-24, hepatic cancer cell, gene therapy
日消外会誌 38: 1280-1287, 2005
別刷請求先
加藤久美子 〒105-8461 港区西新橋3-25-8 東京慈恵会医科大学外科学講座
受理年月日
2005年2月23日
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