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第38巻 第8号 2005年8月 [目次] [全文 ( PDF 544KB)]
症例報告

仙骨前面仮性嚢胞を疑われた1例

小野 千尋1)2), 八重樫 寛治1), 青柳 治彦1), 西岡 良薫1), 西村 久嗣1), 杉原 健一3)

草加市立病院外科1), 国立印刷局東京病院外科2), 東京医科歯科大学大学院腫瘍外科3)

 症例は28歳の男性で,便秘・排尿困難を主訴に近医を受診し,腹部超音波検査で骨盤内腫瘤を指摘され当科に紹介された.骨盤CTおよびMRIで仙骨前面に石灰化を伴う径14×9×10 cmの嚢胞性腫瘤を認めた.周囲臓器への浸潤所見はなかった.注腸検査および大腸内視鏡検査では直腸は後壁側からの強い壁外性圧迫で狭窄していた.直腸粘膜生検では異型細胞は認めなかった.仙骨前面嚢胞性腫瘤の診断で経腹的に腫瘤摘出術を施行した.腫瘤は直腸後面にあり一部仙骨および尾骨と強く癒着していたが,直腸や骨への浸潤は認めなかった.摘出標本では比較的厚い被膜を有し,暗赤色血性の液体と壊死物質を含んでいた.組織学的には嚢胞壁は炎症細胞浸潤を伴う線維組織が主体で上皮成分を欠き仮性嚢胞を疑われた.便秘・排尿困難は改善し術後26日目退院した.仙骨前面には種々の嚢胞性腫瘤が発生するが,仮性嚢胞の報告例は極めてまれであり,若干の文献的考察を加え報告する.

索引用語
pseudocyst, presacral cyst, retrorectal mesenteric cyst

日消外会誌 38: 1346-1350, 2005

別刷請求先
小野 千尋 〒340-8560 草加市草加2-21-1 草加市立病院外科

受理年月日
2005年2月23日

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