症例報告
広範な消化管転移を認めた乳腺浸潤性小葉癌の1例
岩田 輝男, 森田 勝, 仲田 庄志, 菅谷 将一, 小野 憲司, 花桐 武志, 杉尾 賢二, 安元 公正, 山田 壮亮*, 濱田 哲夫**
産業医科大学第2外科, 同 第2病理*, 九州労災病院病理科**
症例は50歳の女性で,両側乳腺浸潤性小葉癌の術後7年目に,右側腹部圧痛,便秘を訴え,精査にて上行結腸の全周性狭窄,胃のびらん性病変を認めた.いずれの病変も生検では低分化腺癌であり,胃の生検では印環細胞を認めた.この消化管腫瘍の組織像は,乳癌の組織像と類似し,免疫染色でエストロゲンレセプターおよびプロゲステロンレセプター陽性であり,乳癌の大腸転移・胃転移が疑われた.イレウス症状出現し,結腸右半切除術を施行した.大腸病変は粘膜下組織を中心に広がり,乳癌と同様の組織所見であった.乳腺浸潤性小葉癌では,消化管への転移がありうるという特殊な転移様式を念頭においた全身検索が必要である.また,浸潤性小葉癌で粘液産生の強い例では,印環細胞の様相を呈すため,胃転移症例では,原発性胃癌との鑑別が必要である.
索引用語
gastrointestinal metastasis, breast cancer, invasive lobular carcinoma
日消外会誌 38: 1357-1362, 2005
別刷請求先
岩田 輝男 〒807-8555 北九州市八幡西区医生ヶ丘1-1 産業医科大学第2外科
受理年月日
2005年2月23日
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