症例報告
腺管絨毛腺腫内に発生した直腸早期低分化腺癌の1例
飯野 年男, 諏訪 勝仁, 三浦 英一 朗, 古川 良幸, 高尾 良彦, 穴澤 貞夫, 山崎 洋次, 矢永 勝彦, 加藤 弘之*, 柳澤 昭夫**
東京慈恵会医科大学外科, 同 病理学教室*, 京都府立医科大学病理学教室**
症例は42歳の男性で,主訴は便への血液の付着.注腸X線および内視鏡検査で直腸(Ra)に表面不整でひだの集中を伴う約20 mm大のIspを認め,生検で低分化腺癌を認めた.対麻痺を有するため,ハルトマン手術を施行した.病理組織学的診断は腺管絨毛腺腫内低分化腺癌であり,深達度はsm2,第1群リンパ節に転移を認めた.両端に腺管絨毛腺腫が存在し,その中央に低分化腺癌が位置する極めてまれな分布形態を示し,免疫染色では癌部にのみ一致したp53蛋白の過剰発現を認めた.K-ras癌遺伝子の点突然変異は,腺管絨毛腺腫,癌部のいずれにも認めなかった.本症例は,組織像および分子生物学的検討よりadenoma-carcinoma sequenceを経由した低分化腺癌と考えられ,低分化腺癌の発生を考察するうえで貴重な症例であった.
索引用語
poorly differentiated adenocarcinoma, tubulovillous adenoma, early colon cancer
日消外会誌 38: 1390-1394, 2005
別刷請求先
飯野 年男 〒105-8461 港区西新橋3-25-8 東京慈恵会医科大学外科
受理年月日
2005年2月23日
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