脱水，電解質異常を呈し肛門外に脱出，嵌頓した直腸絨毛状腺腫の1例

安友　紀幸, 倉島　庸^＊, 近藤　哲^＊

石狩病院外科, 北海道大学大学院医学研究科癌医学専攻癌診断治療学講座腫瘍外科学分野^＊

　脱水，電解質異常を呈し肛門外に腫瘤脱出，嵌頓した直腸絨毛腺腫の1例を経験したので報告する．症例は76歳の女性で，全身倦怠感，脱水，電解質異常，腎機能障害（Na 125 mEq/l，K 2.1 mEq/l，Cl 88 mg/l，BUN 57.9 U/l，CREA 1.36 mg/dl）にて入院になった．脱水，電解質異常の補正により全身倦怠感，腎機能障害は改善した．症状改善後に2年前から認めていた“脱肛”の嵌頓を生じた．嵌頓腫瘤は手拳大で柔らかく絨毛状を呈し，表面は浮腫状で多量の粘液の付着と一部出血を認めた．大腸内視鏡検査にて，腫瘍は歯状線直上より口側直腸に径10 cmの3/4周を占め，生検の結果絨毛状腺腫と診断された．腫瘍径の大きさより悪性化の可能性も考えられ，切除線を歯状線におく超低位前方切除術を行った．病理組織学的所見では，Tubuo-villous adenoma with severe atypiaで悪性病変は認めず，断端は陰性であった．術後脱水，電解質異常の再発は認めていない．

索引用語
villous adenoma, depletion syndrome, incarceration

別刷請求先
安友　紀幸　〒061-3213　石狩市花川北3条3-13　石狩病院外科

受理年月日
2005年2月23日

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