症例報告
先天性無フィブリノゲン血症患者に対する回盲部切除術における周術期管理の1経験例
田儀 知之, 菊池 正二郎, 岡山 徳成, 落合 登志哉, 園山 輝久, 山岸 久一
京都府立医科大学消化器外科
今回,我々は先天性無フィブリノゲン(以下,Fbgと略記)血症患者に対し,Fbg製剤補充下に回盲部切除術を施行し,良好な経過を得たので報告する.症例は36歳の男性で,主訴は右下腹部痛.以前より先天性無Fbg血症と診断されていた.急性虫垂炎による限局性腹膜炎と診断し手術を行った.入院時の血漿Fbg値は50 mg/dl(基準値200~400 mg/dl)であった.手術直前にFbg製剤10 gを静注し,執刀直前の血漿Fbg値は198 mg/dlであった.開腹所見より憩室炎と診断し,回盲部切除術を施行した.術中出血傾向は認めなかった.術後もFbg製剤を血漿Fbg値を目安に静注投与し,血漿Fbg値は術後8日目まで100~199 mg/dlで推移した.術後は特に合併症なく経過した.本症例においてはFbg製剤補充療法が有用と考えられた.また,血漿Fbg値は100 mg/dl以上に維持することが望ましいと考えられた.
索引用語
afibrinogenemia, fibrinogen, perioperative management
日消外会誌 38: 1475-1479, 2005
別刷請求先
田儀 知之 〒602-8566 京都市上京区河原町通広小路上る梶井町465 京都府立医科大学消化器外科
受理年月日
2005年3月30日
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