症例報告
中心静脈栄養用皮下埋込ポートの感染によって脳膿瘍と脾膿瘍を合併したCrohn病の1例
高橋 賢一, 舟山 裕士, 福島 浩平, 柴田 近, 橋本 明彦, 長尾 宗紀, 羽根田 祥, 渡辺 和宏, 工藤 克昌, 佐々木 巖
東北大学大学院生体調節外科
症例は40歳の男性で,栄養吸収障害および難治性の小腸皮膚瘻を有する小腸大腸型Crohn病に対し皮下埋込みポートによる在宅中心静脈栄養(以下,HPN)を施行中であった.発熱を自覚したが受診せず,1週間後に意識障害を来し緊急入院となった.髄液検査にて細菌性髄膜炎と診断し,抗菌剤による治療を開始した.血液培養にてグラム陽性球菌が同定されたためカテーテル敗血症を疑い,中心静脈カテーテルを抜去した.脳膿瘍と脾膿瘍を併発したが,高度の血小板減少を伴っていたため,観血的治療を行わず抗菌剤投与による保存的治療を継続した.カテーテル抜去後,全身状態は速やかに改善し,後遺症を残さず治癒した.血液,髄液およびカテーテル先端部の培養にて黄色ブドウ球菌が同定された.カテーテル敗血症に脳膿瘍や脾膿瘍といった重篤な合併症を伴うことはまれであるが,HPN導入時および外来での患者に対する適切な予防対策が重要と思われた.
索引用語
brain abscess, splenic abscess, home parenteral nutrition
日消外会誌 38: 1607-1611, 2005
別刷請求先
高橋 賢一 〒980-8574 仙台市青葉区星陵町1-1 東北大学大学院生体調節外科
受理年月日
2005年3月30日
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