症例報告
遅発性に仮性大動脈瘤を合併した魚骨による食道穿孔の1例
後藤 直大, 川崎 健太郎, 木村 泰之, 金光 聖哲, 大野 伯和, 神垣 隆, 市原 隆夫, 生田 肇, 黒田 嘉和
神戸大学大学院消化器外科
魚骨による食道穿孔は比較的まれな疾患である.今回当科では魚骨による食道穿孔から膿胸,縦隔気腫を生じ開胸ドレナージ術を行った術後,遅発性に仮性大動脈瘤を合併した症例を経験した.症例は71歳の女性で,発熱を主訴に発症,近医で胸膜炎との診断で入院した.その後,呼吸状態の悪化を来し食道穿孔との診断で当院へ転送された.同日,食道穿孔による膿胸および敗血症の診断のもと緊急手術を施行.左胸腔内に膿瘍および食道近傍に魚骨の存在を認めたため,異物除去とドレナージ術を行った.術後は順調に経過したが,術後13病日の胸部CTで仮性大動脈瘤形成を認めた.これに対し,血管造影下でステントを留置した.本症例は幸い救命できたものの,治療開始まで時間を要したため,仮性大動脈瘤という重篤な合併症を生じ,長期入院を余儀なくされた.早期に診断し,治療を開始することが重要であると再認識させられた.
索引用語
esophageal perforation, fish bone, pseudoaneuyrism
日消外会誌 38: 1690-1696, 2005
別刷請求先
後藤 直大 〒650-0017 神戸市中央区楠町7-5-2 神戸大学大学院消化器外科
受理年月日
2005年5月25日
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