臨床経験
空腸ストーマ造設後の水・電解質管理において食塩水で溶解した経腸栄養剤が有効であった1例
大迫 智, 鴻巣 寛, 山本 経尚, 藤原 郁也, 沢辺 保範, 白方 秀二
綾部市立病院外科
症例は81歳の女性で,腹痛を主訴に当院を受診し,上腸間膜動脈血栓症の診断のもと緊急開腹手術を行った.広範な腸管壊死を認めたため,残存空腸50 cmの大量腸管切除を余儀なくされた.1期的に空腸下行結腸吻合を行ったが,術後に縫合不全を来し,空腸ストーマを造設した.空腸ストーマ患者では,短腸症候群による栄養障害のほかに,大量のストーマ排液により脱水や電解質異常が問題となる.本症例でも,完全静脈栄養から経腸栄養に移行する過程で,経静脈栄養量の減量や経腸栄養量の増量を行うと低ナトリウム血症などの電解質異常が生じた.これに対して,経腸栄養剤の溶解液に食塩水を用いると血清電解質が安定し,経静脈栄養から夜間持続経腸栄養と経口摂取への移行が可能となった.しかし,経腸栄養剤は高浸透圧であるため,脱水状態を助長する可能性があり,適当な補液が必要である.
索引用語
short bowel syndrome, jejunostomy, salt and water depletion
日消外会誌 38: 1778-1783, 2005
別刷請求先
大迫 智 〒135-8550 江東区有明3-10-6 癌研究会有明病院乳腺科
受理年月日
2005年4月27日
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