原著
定型的幽門側胃切除術と比較した幽門保存胃切除術の予後およびQOLの評価
野村 尚, 福島 紀雅, 高須 直樹, 飯澤 肇, 渋間 久, 池田 栄一
山形県立中央病院外科
はじめに:中下部胃癌に対してはD2郭清を伴う幽門側胃切除術(distal gastrectomy;以下,DG)が標準術式として確立しているが,早期癌には縮小手術も行われている.その一つに幽門保存胃切除術(pyrolus preserving gastrectomy;以下,PPG)があり,当院でも採用してきたが,その評価は定まっていない.アンケートによるquality of life(以下,QOL)の調査や内視鏡検査所見を用いてPPGの評価を行った.対象および方法:PPGを施行した胃癌71例(PPG群)を対象とした.予後,術後合併症,愁訴に対するアンケート調査,残胃内視鏡所見について,DGが行われた症例(DG群)を対照に用いて検討した.結果:5生率には差がなかった.術後早期の残胃内食物停滞はPPG群14.1%,DG群3.4%でPPG群に多かった.アンケート調査の結果,逆流があると答えた人がPPG群13.4%,DG群38.0%,早期ダンピング症状はPPG群36.2%,DG群60.5%で,これらはPPG群で少なかった.内視鏡所見はPPG群の69.2%に食物残渣を認め,DG群の32.5%より高頻度であった.残胃炎はPPG群33.3%,DG群68.3%,残胃内胆汁逆流はPPG群5.1%,DG群22.0%とPPG群に少なかった.考察:PPGはダンピング症状や胆汁の逆流,それによる残胃炎が少ないが残胃内の食物残渣が多かった.しかし,アンケート調査では残渣に起因する症状に差はなく,PPGを行うことでQOLの向上が望めると考えられた.
索引用語
pyrolus preserving gastrectomy, function preserving gastrectomy, questionnaire
日消外会誌 38: 1785-1794, 2005
別刷請求先
野村 尚 〒990-9585 山形市飯田西2-2-2 山形大学医学部第1外科
受理年月日
2005年6月22日
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