自己免疫性膵炎に併発した膵尾部癌の1例

坂下　文夫, 棚橋　利行, 山口　和也, 長田　真二, 杉山　保幸, 安達　洋祐

岐阜大学大学院医学研究科腫瘍外科

　自己免疫性膵炎に対するステロイド治療で膵頭部体部の腫脹は改善したものの，その後に膵尾部癌が発見され根治術を施行した症例を経験した．患者は72歳の男性で，口渇，頻尿から高血糖が判明し，CTにて膵腫瘍が疑われた．血液検査ではリウマチ因子が高値を示した．腹部CTでは膵実質が全体的に腫大していたが，主膵管の拡張，嚢胞，石灰化などは認めなかった．ERCPでは主膵管のびまん性狭細像，膵内胆管の狭窄を認め，生検では慢性膵炎の所見であった．自己免疫性膵炎と診断しステロイド治療を行ったところ，膵頭部体部の腫大および膵内胆管・主膵管の狭窄は改善したが，尾部に腫瘤を認めた．同部位の生検にて中分化管状腺癌と診断されたため膵尾部切除術を行った．自己免疫性膵炎は年々増加しているが，膵癌併発例はまれである．しかし，本症の治療の際には，悪性病変の存在も念頭におくことが重要と考えられた．

索引用語
autoimmune pancreatitis, pancreatic cancer, distal pancreatectomy

別刷請求先
坂下　文夫　〒501-1194　岐阜市柳戸1-1　岐阜大学大学院医学研究科腫瘍外科

受理年月日
2005年6月22日

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