症例報告
左水腎症を伴ったS状結腸憩室炎の1例
笹沼 英紀, 俵藤 正信, 宇井 崇, 関口 忠司, 廣田 紀男*
那須南病院外科, 廣田外科病理研究所*
症例は70歳の男性で発熱,左下腹部痛,食欲不振を主訴に近医受診しUS上S状結腸壁の肥厚を指摘され紹介となった.左下腹部に圧痛を伴う腫瘤を触知し,血液検査でWBC 16,290/μl,CRP 11.47 mg/dl,CA19-9 100.5 U/mlと上昇していた.注腸検査では直腸からS状結腸に約12 cmの狭窄像を認めた.CTでは同部位に著明な壁肥厚像,憩室,直腸周囲のリンパ節腫脹と左水腎症を認めた.保存的治療が限界となり,悪性腫瘍による尿管浸潤を強く疑い開腹手術を行った.S状結腸に炎症を主体とする病変があり尿管が巻き込まれていた.低位前方切除術,回腸瘻造設術を施行した.病理組織的診断では悪性所見はなく憩室に起因する急性・慢性炎症であった.退院後,3か月目のCTで左水腎症は改善傾向を示していた.憩室炎は日常遭遇するごく一般的な疾患であるが,尿管狭窄から水腎症を合併することはまれで,悪性腫瘍との鑑別が難しい.文献的な考察を加えて報告する.
索引用語
sigmoid diverticulitis, hydronephrosis, carcinoma
別刷請求先
笹沼 英紀 〒321-0621 那須郡烏山町中央3-2-13 那須南病院外科
受理年月日
2005年6月22日
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