症例報告
食道癌術後の胸壁前再建胃管に発生した難治性穿通性潰瘍の1治験例
大原 利章, 津村 眞, 内海 方嗣, 山崎 泰源, 國土 泰孝, 村岡 篤, 立本 昭彦, 香川 茂雄, 鶴野 正基
香川労災病院外科
症例は66歳の男性で,胸部食道癌に対し食道亜全摘胸壁前胃管再建術を行い,外来通院中,再建胃管前面に発赤を伴う胃管皮膚瘻を形成した.抗潰瘍療法を行うも増悪し,局麻下に胃管部分切除術を施行した.以後,2回の再発を認め原因精査を行った.再度の問診にて,肩関節周囲炎でのNSAID,ステロイドの長期投与が判明し,誘因と考えられた.Zollinger-Ellison症候群の可能性も考え,セクレチン負荷テストを行った.血中ガストリン値は1,210~1,620 pg/mlと持続高値で,paradoxical responseは認められず否定的であった.血中ガストリン値は本邦報告例に比べて著しく高く,原因を検索した.血中壁細胞抗体検査は陰性で,Helicobacter pyloriとの関連は,抗体測定法で血中,尿中は陽性だが,切除標本からは菌は検出されず,原因は不明であった.今後は食道癌術後長期生存に伴い,胃管潰瘍防止のために患者教育の必要性が示唆された.
索引用語
esophageal cancer, gastric tube, peptic ulcer
別刷請求先
大原 利章 〒740-8510 岩国市黒磯町2-5-1 国立病院機構岩国医療センター外科
受理年月日
2005年10月19日
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