症例報告
重症急性膵炎で発症した戸谷IV-A型先天性胆道拡張症の1例
松本 逸平, 味木 徹夫, 沢 秀博, 藤田 恒憲, 上田 隆, 藤野 泰宏, 鈴木 康之, 黒田 嘉和
神戸大学大学院消化器外科
先天性胆道拡張症・膵胆管合流異常症はしばしば急性膵炎で発症するが,そのほとんどは軽症例である.今回,我々は重症急性膵炎で発症した戸谷IV-A型先天性胆道拡張症の1例を経験したので報告する.症例は68歳の女性で,生来健康であったが,2004年12月突然上腹部痛・嘔吐が出現し近医へ救急搬送された.精査にて重症急性膵炎(厚労省重症度スコアー6点,Stage 2)と診断され治療が開始されるも軽快傾向認めず,第2病日に当院へ紹介となり,膵炎に対する保存的治療を行った.膵炎軽快後のmagnetic resonance cholangiopancreatographyおよびERCPにて戸谷IV-A型先天性胆道拡張症と診断した.膵炎発症後44日目に嚢腫胆管切除,肝管空腸吻合術を施行した.手術時,膵炎の影響のため膵内胆管の剥離が困難で膵側胆管切離は膵上縁のレベルで行った.重症急性膵炎の成因として本症は念頭におくべき疾患であり,悪性病変の合併を認めない場合は,嚢腫胆管の完全切除のためには膵炎の影響が十分消退してから手術を行うのが望ましいと考えられた.
索引用語
congenital dlilatation of bile duct, acute pancreatitis, anomalous pancreaticobiliary junction
別刷請求先
松本 逸平 〒650-0017 神戸市中央区楠町7-5-1 神戸大学医学部附属病院消化器外科
受理年月日
2005年9月28日
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