症例報告
原因不明の後腹膜血腫の1例
鈴木 直人, 中尾 健太郎, 成田 和広, 山崎 勝雄, 田中 啓貴, 松田 和広, 角田 明良, 草野 満夫
昭和大学一般・消化器外科
症例は61歳の女性で,右側腹部痛を主訴にて当院を受診した.特記すべき既往歴はなく来院時軽度の貧血を認めた.右側腹部全体に筋性防御をともなう圧痛と,著しい反跳痛を認めた.CTでは右後腹膜腔を中心に,十二指腸から総腸骨動脈分岐部まで連続したlow~iso density areaを認めた.上部内視鏡検査では上部消化管穿孔の所見は認めなかった.以上の所見より,後腹膜血腫をともなう下部消化管穿孔を否定できず同日緊急手術を施行した.開腹にて右側中心に後腹膜血腫を確認したが,腹腔内は淡々血性の腹水が少量のみであった.後腹膜は開放せず,洗浄ドレナージのみとした.術後の3D-CT angiographyでは,血管性病変は指摘できなかった.第10病日に血腫による十二指腸狭窄を認めたが保存的に軽快し,第31病日に軽快退院となった.その後,再発は認められていない.原因不明の後腹膜疾患を認めた場合,後腹膜血腫も念頭に入れる必要がある.
索引用語
retroperitoneal hematoma
別刷請求先
鈴木 直人 〒142-8666 品川区旗の台1-5-8 昭和大学一般・消化器外科
受理年月日
2005年9月28日
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