症例報告
脾転移を伴った虫垂粘液嚢胞腺癌による腹膜偽粘液腫の1例
宮本 英雄, 沖田 浩一, 草間 律, 藤森 芳郎, 山岸 喜代文, 西村 博行, 篠原 直宏*
北信総合病院外科, 同 病理*
腹膜偽粘液腫はlow grade malignancyの腫瘍細胞による腹膜播腫性病変であるが,遠隔転移は非常にまれである.我々は脾転移を伴った虫垂原発の粘液嚢胞腺癌による腹膜偽粘液腫を経験したので報告する.症例は61歳の男性で,1999年から脾嚢胞を指摘されていた.2003年,鼠径ヘルニアの手術時に,腹膜に結節病変を認め腹膜偽粘液腫が疑われた.腹部CTで脾臓に13×11×16 cmの多房性腫瘤を認め,2004年2月手術を行った.脾臓は小児頭大であり,腹腔内に多量のゼリー状の粘液物質が貯留し,腸管,腸間膜および大網に無数の粘液結節の播種を認めた.虫垂は軽度腫大していた.脾摘,大網部分切除,虫垂切除を行い,粘液物質を可及的に除去した.また,腹腔内を温生食および蒸留水で洗浄した.病理組織学的には虫垂の粘液性嚢胞腺癌で,脾病変は転移と診断された.脾嚢胞を認めた場合には本疾患の可能性も念頭に置き,虫垂病変の有無を検索する必要があると考えられた.
索引用語
pseudomyxoma peritonei, splenic metastasis, mucinous cystadenocarcinoma of the appendix
別刷請求先
宮本 英雄 〒388-8004 長野市篠ノ井会666-1 篠ノ井総合病院外科
受理年月日
2005年9月28日
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