原著
99mTc-GSAシンチグラフィーの分肝機能評価に基づいた肝右葉切除術後肝不全の予測
横田 良一, 石津 寛之, 近藤 征文, 岡田 邦明, 益子 博幸, 秦 庸壮, 川村 秀樹, 小原 啓, 戸井 博史, 西野 茂*
JA北海道厚生連札幌厚生病院外科, 同 放射線科*
はじめに:99mTc-GSAシンチグラフィーによる分肝機能測定の試みが報告されている.これを応用し,肝右葉切除の術後経過を術前の99mTc-GSAシンチグラフィーから予測できるかを検討した.方法:肝右葉切除症例16例を対象として術前術後に99mTc-GSAシンチグラフィーを行った.血中消失率HH15に対する肝集積率LHL15の比である血中消失補正肝摂取率LHL15/HH15(GSA index)を算出し,術後肝不全との関係をみた.さらに,術前のSPECTから全肝に対する左葉のカウント比を乗じたものを左葉GSA indexと定義して,実際に術後の99mTc-GSAシンチグラフィーから得られた各パラメーターとの比較検討を行った.結果:術後2週間以上続く腹水貯留,高アンモニア血症などの肝不全傾向をきたした症例の術後2週GSA indexは1.15以下であった.また,術前左葉GSA indexと術後GSA indexとは相関し,肝不全傾向を示した症例の術前左葉GSA indexは0.38以下であった.考察:術前左葉GSA indexが0.38以下の低値を示す症例では肝右葉切除術後肝不全のリスクの可能性が高いと考えられる.これまで,99mTc-GSAシンチグラフィーは多くの施設において肝機能の指標として予備的に用いられてきたに過ぎない.今回は肝右葉切除例のみの検討であるが,最近報告されているGSA indexによる簡素化と,SPECTからの分肝機能評価法という二つを組み合わせることにより,術後肝不全予測のための新しい残肝機能測定法となる可能性がある.
索引用語
99mTc-GSA scintigraphy, hepatectomy, remnant liver function, liver failure
別刷請求先
横田 良一 〒086-1110 標津郡中標津町西10条南9-1-1 町立中標津病院外科
受理年月日
2005年11月30日
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