症例報告
難治性肝性胸水に経頸静脈的肝内門脈大循環短絡術(TIPS)が奏功した2例
藤井 努, 井上 総一郎, 杉本 博行, 竹田 伸, 中尾 昭公
名古屋大学大学院病態制御外科学
症例1は62歳の男性で,Child-Pugh分類CのC型肝硬変に合併した肝細胞癌に対しラジオ波焼灼,TAEを繰り返し行っていた.右胸水による呼吸困難で入院,胸腔穿刺で6,000 mlの排液を認めたが,細胞診は癌陰性であった.その後も多量の排液が続き,塩分制限,利尿剤・Alb製剤の投与,胸膜癒着を行ったが改善しなかった.入院後第39日目経頸静脈的肝内門脈大循環短絡術(以下,TIPSと略記)を施行,右肝静脈から門脈への短絡路を形成したところ,胸水量は著明に減少し退院可能となった.症例2は61歳の男性で,Child-Pugh分類BのC型肝硬変に合併した肝細胞癌に対しラジオ波焼灼,TAEを繰り返してきた.制御不能の右胸水で入院,保存的治療で改善せずTIPSを施行した.直後に肝性脳症で再入院し,分枝鎖アミノ酸製剤による治療を要した.その後,意識状態は改善し,現在は胸水の貯留を認めず外来通院している.
索引用語
transjugular intrahepatic portosystemic shunt, hepatic hydrothorax, HCC
別刷請求先
藤井 努 〒466-8550 名古屋市昭和区鶴舞町65 名古屋大学大学院病態制御外科学
受理年月日
2005年11月30日
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