症例報告
十二指腸乳頭部癌術後の多発肝転移巣に対しTS-1を用いた時間治療(chronotherapy)が著効した1例
横山 直行, 白井 良夫, 宗岡 克樹*, 若井 俊文, 畠山 勝義
新潟大学大学院医歯学総合研究科消化器・一般外科学分野, 新津医療センター病院外科*
症例は74歳の女性.十二指腸乳頭部癌切除後,最大径8 cmまでの多発肝転移巣が出現.TS-1を150 mg/日(15時に50 mg,22時に100 mg内服)隔日で投与した.TS-1投与日の血清5-FU濃度は夜間高く,午前3時に最高値(539 ng/ml)を示し,本療法が時間治療であることを確認した.治療開始後転移巣は徐々に縮小・減少し,4か月後には肝前区域に径2.5 cm大の単個を残すのみとなった.骨髄抑制や消化器系の副作用はなく,外来での加療が可能であった.治療開始151日目に多量の吐血を来たし,出血性ショックで同日死亡した.病理解剖の結果,死因は肝前区域の残存腫瘍の退縮により,同腫瘍内を貫通する肝動脈が破綻したための胆道出血と診断された.本症例の経験から,TS-1を用いた時間療法が十二指腸乳頭部癌に対し有効である可能性が示唆された.一方,化学療法著効例では腫瘍壊死に伴う動脈性出血にも留意すべきである.
索引用語
ampullary carcinoma, chronomodulation, 5-fluorouracil
別刷請求先
横山 直行 〒951-8510 新潟市旭町通1-757 新潟大学大学院消化器・一般外科学分野
受理年月日
2005年10月19日
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