症例報告
単発性脾転移を来した肝細胞癌の1切除例
新見 行人, 明石 諭, 長尾 美津男, 高 済峯, 岡山 順司, 中島 祥介
奈良県立医科大学消化器・総合外科学教室
症例は55歳の男性で,平成8年2月前区域を中心とする巨大肝細胞癌に対して拡大右葉切除術施行した.その後,残肝再発,両側肺転移を来し,TAEを2度,肺切除を2度施行した.平成13年11月脾臓に径2.5 cmの腫瘍を認めたため,精査目的に平成14年1月入院.腹部超音波検査にて腫瘍は径5 cmにまで増大していた.血管造影上,腫瘍濃染は認めなかったが,肝細胞癌脾転移と診断し,手術を施行した.腫瘍は大部分が脾被膜に覆われて存在していたが,一部は横隔膜に浸潤しており,横隔膜・肝臓の一部も合併切除した.切除標本においても,腫瘍はほぼ全体が脾実質内に存在していた.術後3年経過した現在,無再発生存中である.肝細胞癌の単発性脾転移はまれであり予後不良例が多いが,本症例のように他病変がコントロール可能であれば,切除により良好な予後が期待できる.
索引用語
hepatocelluler carcinoma, spleen, metastasis
別刷請求先
新見 行人 〒630-8146 奈良市八条4-643 済生会奈良病院
受理年月日
2005年11月30日
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