症例報告
TS-1・CDDPを用いた術前化学療法により根治手術を施行しえた門脈腫瘍塞栓合併胃癌の1例
上里 昌也, 篠原 靖志, 圷 尚武, 鈴木 理之, 加野 将之, 千葉 聡, 佐藤 治夫, 坂本 昭雄, 落合 武徳*
国保成東病院外科, 千葉大学大学院医学研究院先端応用外科学*
症例は51歳の男性で,食欲不振と体重減少を主訴に当科を受診した.上部消化管内視鏡検査で,胃体上部大彎に径3 cm大の1型腫瘍を認めた.また,腹部血管造影検査とCTで,門脈本幹内に陰影欠損とNo. 8,12リンパ節の腫大を認めた.門脈腫瘍塞栓,リンパ節転移を伴う進行胃癌の診断にて術前化学療法を施行した.TS-1 100 mg/body/dayを2週間投与し2週間休薬,CDDPは100 mg/bodyを8日目に点滴静注し,これを1コースとした.副作用は軽度の骨髄抑制のみであった.4コース終了時に門脈腫瘍塞栓は消失し,腫大したリンパ節もみられず.幽門側胃切除術を施行した.病理組織学的検査所見では癌細胞を原発巣のみに認め,リンパ節転移を認めず.治癒切除を施行できたと判断した.術後1年経過し,CT上再発なく外来でTS-1による化学療法を継続している.門脈腫瘍塞栓を伴う進行胃癌に対して根治手術は難しいが,TS-1・CDDP併用術前化学療法の有効性を示した1例と考え報告する.
索引用語
TS-1, gastric cancer, portal vein thrombus
日消外会誌 39: 1480-1486, 2006
別刷請求先
上里 昌也 〒289-1326 山武市成東167 国保成東病院外科
受理年月日
2006年2月22日
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