症例報告
胆管内無水エタノール注入(biliary ablation)により治癒した腹腔鏡下胆嚢摘出術後難治性胆汁瘻の1例
京兼 隆典, 弥政 晋輔, 黒柳 裕, 小林 聡, 鈴木 和志, 宮田 一志, 松田 眞佐男
社会保険中京病院外科
症例は75歳の女性で,2004年10月胆石症の診断で腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した.術後4日目より発熱を認め,腹部CTで右肝下面に液体の貯留を認めた.ドレナージを施行したところ胆汁が流出し,術後胆汁瘻と診断した.ドレーンからの造影では,止血クリップにより閉塞した前区域胆管が造影され,下流側胆管は造影されなかった.胆管損傷による胆汁瘻と判断し,biliary ablation法の適応と考え,術後第23日目より開始した.胆管造影によりエタノール注入量を決定した.1日3~4回,2.5 mlの無水エタノールを注入,延べ4日間にわたり施行した.biliary ablaiton開始12日目には胆汁排泄はほとんど認められなくなり,19日目にドレーンを抜去した.肝膿瘍などの重篤な合併症発生はなかった.Biliary ablation法は,難治性胆汁瘻のなかで,胆管閉塞や胆管完全離断などにより下流側胆管との交通が断たれている場合には,有効な治療法であると考えられる.
索引用語
biliary ablation, bile leak, ethanol
日消外会誌 39: 1498-1504, 2006
別刷請求先
京兼 隆典 〒457-8510 名古屋市南区三条1-1-10 社会保険中京病院外科
受理年月日
2006年2月22日
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