症例報告
5-FU系抗癌剤使用にて良好な予後が得られた非切除小腸腺癌の1例
南 一仁, 山口 佳之*, 津谷 康大, 鈴木 崇久, 宮原 栄治, 亀田 彰, 野宗 義博
済生会広島病院外科, 広島大学原爆放射線医科学研究所腫瘍外科*
5-FU系抗癌剤をベースとした化学療法が奏功した非切除小腸腺癌の1例を経験した.症例は74歳の女性で,小腸悪性腫瘍の診断にて開腹手術を施行した.病変占居部位は空腸,長軸8 cmに及ぶ全周性腫瘍であった.横行結腸,横行結腸間膜および胃に直接浸潤しており,多数の腹膜播種を認めた.播種結節の病理診断はtubular adenocarcinomaであった.以上より,根治性はないと判断しバイパス術のみ施行した.術後化学療法としてlow dose FP療法,続いてTS-1療法を施行した.原発巣を標的病変とした治療効果は,部分奏功(PR)が得られ,無増悪生存期間は25か月であった.有害事象は,low dose FP療法中にはgrade 3の口内炎,皮膚炎,悪心・嘔吐,食欲不振,grade 2の白血球減少が見られた.一方,TS-1療法中はgrade 1の白血球減少および皮膚色素沈着以外認めず,22か月に及ぶ外来治療が継続され,良好なquality of life(QOL)が維持できた.
索引用語
small bowel adenocarcinoma, low-dose FP treatment, oral TS-1 therapy
日消外会誌 39: 1523-1528, 2006
別刷請求先
南 一仁 〒731-4311 安芸郡坂町北新地2-3-10 済生会広島病院外科
受理年月日
2006年2月22日
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