症例報告
特発性細菌性腹膜炎を契機に発見された上行結腸癌の1例
境 雄大, 佐藤 浩一, 長谷川 善枝, 木村 由佳, 須藤 泰裕, 小栁 雅是, 田中 正則*
弘前市立病院外科, 同 臨床検査科*
症例は心房細動とうっ血性心不全の既往がある79歳の男性で,腹痛を主訴に近医を受診した.超音波検査で骨盤内に腹水を認めたが,腹膜刺激症状と炎症所見がなく,保存的治療を行った.翌日,腹膜刺激症状と炎症反応を認め,当科に入院した.急性虫垂炎による汎発性腹膜炎を疑い,手術を行った.虫垂腫大と骨盤腔内の膿性腹水を認め,虫垂切除術を行った.腹水からBacteroides thetaiotaomicronが検出された.摘出虫垂粘膜に炎症を認めなかった.高CEA血症と貧血を認めたため,消化管精査を行い,上行結腸癌が発見された.23日目に結腸右半切除術を行った.腫瘍の穿孔,膿瘍形成を認めなかった.腫瘍は高分化腺癌で,ss,n(-),P0,H0,M(-),stage IIであった.術後経過は良好で,17日目に退院した.自験例は心不全による腹水に大腸癌の壊死部または口側の浮腫状の腸管壁からバクテリアルトランスロケーションが起こり,特発性細菌性腹膜炎を来したと推測された.
索引用語
spontaneous bacterial peritonitis, colon cancer, Bacteroides
日消外会誌 39: 1559-1564, 2006
別刷請求先
境 雄大 〒036-8004 弘前市大町3-8-1 弘前市立病院外科
受理年月日
2006年2月22日
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