症例報告
急性虫垂炎を契機に発見された低分化虫垂腺癌の1例
山口 晃司, 阿部 元輝, 伊藤 清高, 鈴木 雅行, 岡本 賢三*
労働福祉事業団岩見沢労災病院外科, 同 病理*
症例は54歳の女性で,右下腹部痛を主訴に当院を受診した.腹部CTにて虫垂と右卵管の腫大を認め急性虫垂炎の診断にて,虫垂切除および右卵管部分切除術を施行した.術後の病理組織学的検査は粘膜内から筋層,一部漿膜にかけてスキルス状に増殖する低分化腺癌であった.初回手術から1か月後,D3郭清のため結腸右半切除術を施行した.組織学的病期はss,n(-),P0,H0,M(-),Stage IIであった.根治術から28か月後に腫瘍マーカーの上昇と腹水貯留を認め,虫垂癌術後の腹膜播種と診断し,化学療法を施行したが著効なく34か月目に死亡した.虫垂癌の中でも,低分化腺癌はまれで術前診断が困難な場合が多い.急性虫垂炎と診断され,術中所見や術後の組織診断によって初めて診断が得られることも少なくない.急性虫垂炎症状に対する虫垂切除では,積極的に虫垂の病理組織診断を行い,また,その癌の深達度から適正な追加治療を考慮すべきである.
索引用語
appendiceal cancer, poorly differentiated adenocarcinoma
日消外会誌 39: 1856-1860, 2006
別刷請求先
山口 晃司 〒068-0004 岩見沢市4条東16-5 労働福祉事業団岩見沢労災病院外科
受理年月日
2006年4月26日
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