症例報告
異時性肝転移を認めたAFP産生S状結腸癌の1例
塩飽 洋生, 田辺 嘉高, 阿部 祐治, 井原 隆昭, 岩下 俊光, 光山 昌珠, 中守 真理1), 豊島 里志1), 濱田 哲夫2), 平野 豊3)
北九州市立医療センター外科, 同 病理1), 九州労災病院病理科2), 同 外科3)
一般に予後不良とされているAFP産生のS状結腸癌の1例を経験したので報告する.症例は61歳の女性で,前医にてS状結腸癌に対しS状結腸切除術を施行された.術後8か月目に肝S5を主体に右葉を占居する長径9 cmの肝転移を認めたため,当院へ入院し拡大肝右葉切除術を施行した.術前の腫瘍マーカーは,CEAが6.6 ng/ml,CA19-9が239.4 U/mlと上昇し,さらに血清AFP値は1,463.7 ng/mlと異常高値を示していた.病理組織学的検査においては,原発巣および肝転移巣ともに,中分化型腺癌でAFPの免疫染色が陽性であった.Hepatoid differentiationは肝転移巣で認められた.これらより,AFP産生大腸癌の肝転移と診断した.AFP産生大腸癌の報告は極めてまれである.また,免疫組織学的検査所見において,chromogranin A染色陽性部分は原発巣およびリンパ節転移巣に比べ,肝転移巣でより広範囲に認められた.このことは腫瘍が分化・増殖に伴い,神経内分泌性分化を呈していった可能性を示唆するものであった.AFP産生腫瘍で,かつ神経内分泌性分化を伴った大腸癌の症例はさらにまれである.
索引用語
alpha-fetoprotein, colon cancer, neuroendcrine tumor
別刷請求先
塩飽 洋生 〒802-0077 北九州市小倉北区馬借2-1-1 北九州市立医療センター外科
受理年月日
2006年5月31日
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