症例報告
S状結腸癌の孤立性小腸転移の1例
辻村 敏明, 豊川 晃弘, 若原 智之, 椋棒 英世, 浜辺 豊
淀川キリスト教病院外科
大腸癌の小腸への孤立性遠隔転移はまれであり,予後不良である.今回,我々はS状結腸癌術後の吻合部再々発に対する手術中に発見し,根治手術しえた孤立性小腸転移の1例を経験したので報告する.症例は68歳の男性で,S状結腸癌および吻合部再発に対する2度の手術の後,無症状で経過していた.しかし,定期検査にて吻合部再々発を認め,開腹手術を施行した.開腹所見にて再々発病変の他に回腸に粘膜下腫瘍様の病変を触知し,前方切除術および回腸部分切除術を施行した.病理組織学的検査では回腸病変の組織像は初発S状結腸癌および吻合部再々発病変と酷似しており,孤立性小腸転移と診断した.患者は再々手術より1年半経過した現在,再発徴候なく生存中である.大腸癌からの孤立性小腸転移のうち多臓器転移のない症例では,積極的な外科的切除により良好な生命予後も期待できると考える.
索引用語
isolated small bowel metastasis, colon cancer, anastomotic recurrence
別刷請求先
辻村 敏明 〒650-0017 神戸市中央区楠町7-5-2 神戸大学大学院消化器外科学
受理年月日
2006年5月31日
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