症例報告
大腿ヘルニア嵌頓を契機に発症したと思われる腹部食道破裂の1例
廣川 高久, 赤毛 義実, 若杉 健弘, 山本 稔, 沢井 博純, 岡田 祐二, 竹山 廣光, 真辺 忠夫
名古屋市立大学大学院医学部医学研究科臨床病態外科
特発性食道破裂は比較的まれな疾患である.また,一般的に飲酒に伴う嘔吐に起因することが多く,その診断,治療が遅延すると重篤な転機をとりうる.今回,我々は大腿ヘルニア嵌頓による嘔吐にて発症したと思われる特発性食道破裂の1例を経験したので報告する.症例は86歳の女性で,吐血を主訴に当院救急外来へ搬送された.腹部は軽度膨満していたが,圧痛,腹膜刺激症状などは認めなかった.腹部X線写真にて小腸ガス像を認め,また腹部CTにて右大腿ヘルニア嵌頓と小腸イレウス所見を認めた.また,食道周囲に遊離ガス像を疑う所見を認めた.用手的にヘルニア嵌頓を解除したのち,上部消化管内視鏡検査を施行した.その後,遊離ガス像が増加したことなどから特発性食道破裂を強く考え,緊急手術を施行した.腹部食道に約5 cmの裂創を認め,その一部が破裂孔となっていた.1次縫合と胃底部縫着術を施行した.術後の経過は良好で合併症なく退院した.
索引用語
spontaneous rupture of the esophagus (Boerhaave syndrome), femoral hernia incarceration, ileus
別刷請求先
廣川 高久 〒467-8601 名古屋市瑞穂区瑞穂町字川澄1 名古屋市立大学大学院医学研究科臨床病態外科
受理年月日
2006年6月28日
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