症例報告
長期間の経過観察後に切除した膵粘液性嚢胞腺癌の1例
野村 尚弘, 金住 直人, 渡邉 出, 竹田 伸, 井上 総一郎, 野本 周嗣, 杉本 博行, 中尾 昭公
名古屋大学大学院消化器外科学
症例は36歳の女性で,1999年3月,腹痛を主訴に近医を受診.巨大膵嚢胞の診断で経皮的エコー下嚢胞穿刺やエタノール注入を繰り返してきたが,嚢胞の縮小が得られず腫瘍性病変も否定できないため2005年5月当院に紹介となった.入院時上腹部に小児頭大の腫瘤を触知した.腫瘍マーカーはCEA 3.7 ng/ml,CA19-9 40 U/mlであった.CTでは膵体尾部に接して20 cm大の多房性嚢胞性腫瘤を認め,嚢胞壁や隔壁に濃染される充実性部分が見られた.膵体尾部に発生した粘液性嚢胞腫瘍を疑い手術を施行した.表面平滑な厚い被膜を有する巨大腫瘤で,被膜を破らないように剥離を進め脾膵体尾部とともに腫瘤を摘出した.割面は隔壁を有し,内腔に突出する不整な隆起を認めた.病理組織検査にて微小浸潤性の膵粘液性嚢胞腺癌と診断された.長期間の経過観察後に切除された膵粘液性嚢胞腫瘍はまれであり文献的考察を加え報告する.
索引用語
mucinous cystadenocarcinoma of the pancreas, ovarian-like stroma
別刷請求先
野村 尚弘 〒466-8550 名古屋市昭和区鶴舞町65 名古屋大学大学院消化器外科学
受理年月日
2006年7月26日
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