症例報告
広範囲浸潤性局所再発を来した鼡径部脱分化型脂肪肉腫の1例
長江 逸郎, 土田 明彦, 田辺 好英, 高橋 総司, 湊 進太朗, 日比 康太, 松林 純*, 泉 美貴*, 向井 清*, 青木 達哉
東京医科大学病院消化器外科・小児外科, 同 病理診断学講座*
症例は44歳の男性で,1998年9月に左鼡径ヘルニアの疑いで当院に紹介された.術前CT,超音波検査で鼡径部に腫瘤が認められたため,腫瘍切除術(精索合併切除)を施行した.当初の病理診断ではmyofibroblastic sarcoma, low grade malignancyであった.術後半年から約4年間,自覚症状ないため受診されなかったが,再受診時には左鼡径部に再発腫瘍を認めた.手術所見では再発腫瘍は腹壁からS状結腸,左尿管,外腸骨動脈,静脈,膀胱壁への浸潤を認めた.腫瘍摘出ならびに浸潤臓器の広範囲合併切除,F-F bypassによる血行再建ならびに腹壁再建を施行した.再発腫瘍は脱分化型脂肪肉腫と診断,初回病理標本も見直しにより同一腫瘍型であることを確認した.術後は経過良好で現在3年経過したが再発はない.本疾患は当初鼠径ヘルニアと診断されており,診断,臨床経過ならびに治療法において検討を要した症例であった.
索引用語
dedifferentiated liposarcoma, groin tumor, inguinal hernia
別刷請求先
長江 逸郎 〒160-0023 新宿区西新宿6-7-1 東京医科大学病院消化器外科・小児外科
受理年月日
2006年7月26日
 |
PDFを閲覧するためにはAdobe Readerが必要です |
|