症例報告
洗浄が奏功した特発性食道破裂術後のMRSA膿胸の1例:本邦報告例の臨床的検討
境 雄大, 佐藤 浩一, 須藤 泰裕, 小柳 雅是, 長谷川 善枝
弘前市立病院外科
無菌化し治癒した特発性食道破裂術後のMRSA膿胸の1例を報告する.症例は60歳の男性で,嘔吐後の腹痛を主訴に近医を受診,胸部X線検査で左胸水と気胸を指摘された.翌日,敗血症性ショックを呈し,当科に入院した.胸腔から褐色の排液があり,食道穿孔と診断し,緊急手術を行った.下部食道に穿孔があり,縫合閉鎖した.循環不全のため縫合部被覆を断念した.術後は多臓器不全を呈した.翌日から1日2回,生理食塩水で胸腔内洗浄を開始した.術後13日目に創部と胸水からMRSAを確認し,洗浄液を増量,抗MRSA薬を使用した.術後30日目に胸水,44日目に創部のMRSAが陰性化,58日目に胸水が無菌化し,胸腔ドレーンを抜去した.術後108日目に退院した.術後食道造影,内視鏡で縫合部は治癒,CTでは肺容量は保たれていた.特発性食道破裂術後のMRSA膿胸には大量の生理食塩水による定時的洗浄が有効で,本邦報告例の文献的考察を加えて報告する.
索引用語
MRSA, empyema, spontaneous esophageal rupture
別刷請求先
境 雄大 〒036-8004 弘前市大町3-8-1 弘前市立病院外科
受理年月日
2006年9月27日
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