症例報告
臍腸管遺残に起因した成人のイレウスの1例
田中 麻紀子, 小出 一真, 山下 哲郎, 小野 滋*, 谷口 史洋, 塩飽 保博, 栗岡 英明
京都第一赤十字病院外科, 同 小児外科*
症例は25歳の女性で,腹痛を主訴に来院した.鎮痙剤投与にて症状の改善がみられたためいったん帰宅したが,その後に再度症状が出現し,増悪傾向がみられたため翌朝に再度受診となった.観察入院としたが,同日夕方から腹痛が増強し,腹膜刺激症状の出現がみられ,腹部CTにて小腸の著明な拡張,また血液生化学検査では著明な骨髄抑制を認めた.イレウスの進行とそれに伴う全身状態の悪化と考え,緊急開腹手術を施行した.開腹所見としては,臍部腹膜側から回盲部より約50 cm口側の回腸につながる索状物が認められ,臍腸管遺残症と考えた.この索状物を軸として小腸が回転し,小腸ループによる内ヘルニアが発症し,イレウスを生じたものと思われた.本邦での報告例は少ないが,腹部手術既往がないイレウス症例では,成人においても,臍腸管遺残症を鑑別診断として考慮する必要があると思われた.
索引用語
omphalomesentric duct remnant, intestinal obstruction, adult
別刷請求先
田中麻紀子 〒605-0981 京都市東山区本町15-749 京都第一赤十字病院外科
受理年月日
2006年10月25日
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