症例報告
ループス腹膜炎の2例
北原 弘恵, 小松 大介, 北沢 将人, 小山 佳紀, 久米田 茂喜, 大谷 方子*
長野県立木曽病院外科, 信州大学病理学講座*
ループス腹膜炎の2例を経験した.症例1は20歳時に全身性エリテマトーデス(systemic lupus erytematosus;以下,SLEと略記)を発症した37歳の女性で,腹痛,発熱を主訴に来院した.急性虫垂炎の診断で虫垂切除術を施行したが,病理組織学的検査で虫垂の粘膜下から固有筋層に血管炎を認め,免疫血清学的検査とあわせループス腹膜炎と診断した.症例2は23歳時にSLEを発症した36歳の女性で,嘔吐を主訴に来院し,腸閉塞の診断にて入院した.入院2日後より反跳痛を認め,腹部CTにて腹水増加と空腸の拡張と浮腫を認めたため,絞扼性イレウスの診断で開腹した.開腹時多量な腹水と小腸の発赤と拡張を認めたが,腸閉塞は認めなかった.手術所見および補体値低下から,ループス腹膜炎と診断した.2症例ともステロイド治療で症状は軽快した.急性腹症として外科医が初診となる可能性もあり,特にSLEの既往を有する患者ではループス腹膜炎も念頭におく必要がある.
索引用語
lupus peritonitis, systemic lupus erythematosus, acute surgical abdomen
別刷請求先
北原 弘恵 〒390-8621 松本市旭3-1-1 信州大学医学部第1外科
受理年月日
2006年9月27日
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