症例報告
茎捻転による副脾破裂の1例
錦織 直人, 青松 幸雄, 藤本 平祐, 井上 隆, 桑田 博文, 中島 祥介*
市立松原病院外科, 奈良県立医科大学消化器・総合外科*
副脾の発生頻度は剖検例の10~30%と報告されているが,臨床的に問題となることはほとんどない.我々は極めてまれな副脾茎捻転による副脾破裂の1例を経験した.症例は32歳の男性で,左側腹部痛を主訴に来院し同部に著明な圧痛,反跳痛を認めた.血液検査にて貧血の進行を認め,腹部CT・腹部血管造影検査にて脾臓腹側に脾動脈分枝を腫瘍血管とする15 cm大の腫瘤像を認めた.脾腫瘍破裂による腹腔内出血の診断で緊急開腹手術を行った.多量の血性腹水と網嚢内に凝血塊が充満しており,開放すると膵前面に7 cm大の副脾を認め,脾動静脈から分岐し流入する血管茎が時計方向に720°捻転していた.副脾門部の被膜が破綻しており同部位からの出血と考えられた.以上より,茎捻転による副脾破裂と診断し副脾を摘出した.副脾茎捻転に伴う副脾梗塞,破裂は非常にまれな疾患であるが,若年者の急性腹症の鑑別診断として念頭におくべき疾患であると考える.
索引用語
accessory spleen, torsion, rupture
別刷請求先
錦織 直人 〒631-0846 奈良市平松1-30-1 県立奈良病院救命救急センター
受理年月日
2006年11月22日
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