症例報告
壁内膿瘍形成を伴う巨大な肉芽腫性虫垂炎の1例
上坂 邦夫, 嶋田 安秀, 邦本 幸洋*, 酒井 康裕**
兵庫県立柏原病院外科, 聖隷三方原病院外科*, 公立豊岡病院臨床病理科**
症例は22歳の男性で,主訴は右下腹部痛.右下腹部に鶏卵大の硬い腫瘤を触知し腹膜刺激症状を認めた.US, CTで右下腹部に腫瘤性病変を認めた.膿瘍形成を伴う急性虫垂炎の診断で手術を行ったところ,虫垂が充実性に9.0×5.8×3.3 cmと著明に腫大しており虫垂腫瘍を否定できず回盲部切除術を行った.術後の病理組織学的検査所見で虫垂壁内膿瘍,多核巨細胞,乾酪壊死などの所見を有する肉芽腫性虫垂炎と判明した.Yershinia Enterocolitica抗体価は陰性であった.肉芽腫性虫垂炎は報告当初は虫垂原発のクローン病と考えられ,まれな疾患とされているが,虫垂切除術後の病理組織学検査で約0.1%から2%の頻度で虫垂に肉芽腫性病変認められ,クローン病以外に感染症,異物,保存的治療後の虫垂切除術などの原因が報告されている.エルシニア感染症との関係が注目されているが確定診断は困難である.今回の症例では魚骨などの異物の存在と抗菌薬の使用による影響が疑われた.
索引用語
granulomatous appendicitis, huge appendicitis, foreign body of the appendix
別刷請求先
上坂 邦夫 〒669-3395 丹波市柏原町柏原5208-1 兵庫県立柏原病院外科
受理年月日
2006年11月22日
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