前立腺浸潤下部直腸癌に対し直腸切断術および前立腺全摘術を施行した1例

武藤　俊博, 平井　孝, 林　宣男^＊, 金光　幸秀, 小森　康司, 安藤　公隆, 加藤　知行

愛知県がんセンター中央病院消化器外科, 同　泌尿器科^＊

　症例は58歳の男性で，血便を主訴とし近医で下部直腸腺癌と診断され当院紹介となった．腫瘍は直腸前壁の1/2周2型病変で，腫瘍下縁までの距離は歯状線より2 cmであった．CT, MRI，超音波内視鏡検査にて前立腺左側への浸潤が疑われた．術前全身検査にて遠隔転移なく，2005年5月，直腸切断術，前立腺全摘術および側方郭清を施行し治癒切除を得た．病理組織学的検査にて前立腺浸潤と，とくに左骨盤壁方向の剥離断端で癌の露出がないことが確認された．膀胱尿道吻合部の縫合不全があったが保存的に軽快した．左側の骨盤神経叢は切離したものの十分な膀胱機能が温存された．本術式は，浸潤が前立腺に限局した局所進行直腸癌に対して，surgical marginを確実に確保でき，かつ骨盤内臓全摘術を避けうる有用な方法であると考え報告した．

索引用語
rectal cancer, abdominoperineal resection, prostatectomy

別刷請求先
武藤　俊博　〒464-8681　名古屋市千種区鹿子殿1-1　愛知県がんセンター消化器外科

受理年月日
2006年11月22日

PDFを閲覧するためにはAdobe Readerが必要です