症例報告
直腸癌胃転移の1例
坂部 龍太郎, 平林 直樹, 佐藤 幸雄, 多幾山 渉, 亀岡 稔, 中島 亨, 桑原 正樹, 佐伯 修二, 向田 秀則, 山下 芳典
広島市立安佐市民病院外科
大腸癌の胃転移はまれで,本邦では過去に18例が報告されているに過ぎない.今回,我々は直腸癌胃転移の1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.症例は53歳の男性で,直腸癌術後1年2か月目に上部消化管内視鏡検査で胃の広範囲に多発する,中心に陥凹を有するたこいぼびらん様の小隆起を認めた.上部消化管造影検査では,いわゆるbull's eye signを呈した.生検にて以前の直腸癌の組織型と類似したmucinous adenocarcinoma, signet ring cell carcinomaを認めたため,直腸癌からの胃転移と診断した.全身化学療法を施行したが癌は急速に進行し,胃転移の診断から5か月目に癌死した.病理解剖では胃,小腸,結腸,肺,肝,骨髄など広範に転移を認めた.組織学的に胃腫瘍はmucinous adenocarcinoma, signet ring cell carcinomaが主に粘膜下層から固有筋層にかけて認められ,直腸癌からの血行性胃転移と考えられた.
索引用語
metastatic gastric cancer, rectal cancer, bull's eye sign
別刷請求先
坂部龍太郎 〒731-0293 広島市安佐北区可部南2-1-1 広島市立安佐市民病院外科
受理年月日
2006年10月25日
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