症例報告
1コースのTS-1/CDDPを用いた術前化学療法で組織学的CRが得られた進行胃癌の1例
徳永 正則, 大山 繁和, 布部 創也, 比企 直樹, 福永 哲, 瀬戸 泰之, 山口 俊晴
癌研有明病院消化器外科
症例は69歳の女性で,前医で進行胃癌と診断され,当院紹介受診となった.腹部CT上,膵臓への直接浸潤があり,リンパ節転移も著明であった.cT4,cN2,cM0,cStage IVと診断し,TS-1/CDDPを用いた術前化学療法(前化療)を1コース施行した後,開腹術を行った.腹膜播種はみられず,洗浄細胞診の結果も陰性であったため,D2郭清を伴う胃全摘,膵脾合併切除を施行した.切除標本の組織学的検索では,主病巣,リンパ節ともに癌細胞がみられず,grade3,組織学的CRと診断された.現在,術後3年が経過したが無再発生存中である.近年,進行胃癌に対する外科的切除後の治療成績向上を目指し,さまざまな前化療が試みられている.TS-1/CDDPを用いた前化療の報告も多くみられ,組織学的CRの報告も散見されるが,多くは複数コースの投与によるものである.1コースの前化療で,組織学的CRが得られた症例は非常にまれと考えられたため報告する.
索引用語
TS-1, neoadjuvant chemotherapy, complete response
日消外会誌 40: 1479-1484, 2007
別刷請求先
徳永 正則 〒135-8550 江東区有明3-10-6 癌研有明病院消化器外科
受理年月日
2007年1月31日
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