症例報告
腸重積で発症した回腸リンパ管腫の1例
小野里 航, 中村 隆俊, 旗手 和彦, 小澤 平太, 佐藤 武郎, 國場 幸均, 井原 厚, 渡邊 昌彦
北里大学医学部外科
症例は55歳の女性で,昼食後より腹痛,嘔吐が出現し近医を受診した.近医では腸閉塞と診断され,入院後イレウス管を挿入され保存的治療をうけた.その後も症状改善せず,発症5日後より腹痛増強のため当院転院となった.入院時腹部全体に強い圧痛と反跳痛を認め,右下腹部には手拳大の腫瘤を触知した.腹部造影CTでは回盲部にtarget signを認めた.腸重積による腹膜炎と診断し,緊急手術を施行した.術中所見では回腸―回腸―結腸型の腸重積を認め,回盲部は巨大ソーセージ様の暗赤色腫瘤を形成していた.用手整復が困難であったので回盲部切除術を施行した.切除標本で回腸末端から54 cmの部位に2.7 cm大の粘膜下腫瘍を認め,この粘膜下腫瘍が先進部位となっていた.また,回腸末端から20 cmの部位にはメッケル憩室を認めた.病理組織学的検査では回腸リンパ管腫と診断された.小腸リンパ管腫はまれであり,本邦では36例の報告があるが,しかし腸重積で発症した報告例は6例と少なく,本症は極めてまれな症例と考えられた.成人腸重積の原因の一つとして,小腸リンパ管腫を念頭におく必要があると考えられた.
索引用語
lymphangioma of small intestine, intussusception, Meckel's diverticulum
日消外会誌 40: 1531-1535, 2007
別刷請求先
小野里 航 〒228-8555 相模原市北里1-15-1 北里大学医学部外科
受理年月日
2007年1月31日
|
PDFを閲覧するためにはAdobe Readerが必要です |
|