原著
大腸癌における他臓器重複癌の検討
塩澤 学, 土田 知史, 菅野 伸洋, 森永 聡一郎, 赤池 信, 杉政 征夫
神奈川県立がんセンター消化器外科
はじめに:近年,大腸癌症例の増加や治療成績の向上により他臓器重複癌症例を経験することが多くなってきている.そこで,重複癌症例の臨床的意義と対策について検討した.方法:1982年1月から2005年12月までの当センターにて大腸癌手術を施行した2,141例を対象として予後因子と死因を検討し,さらに重複癌症例の臨床病理学的特徴,臓器特異性,頻度,発症時期について検討した.結果:大腸癌根治切除例において重複癌ありは独立予後因子となっていた(p=0.001).また,術後異時性重複癌ありの群では,なしの群に比べ重複癌死が有意に多くなっていた(p=0.000).大腸癌手術症例における重複癌は387例(18.1%)で,同時性108例(5.0%),異時性288例(13.5%)であった.重複臓器は,男性は胃癌(43.8%),肺癌(15.3%),女性は乳癌(32.4%),子宮癌(25.5%)の順で多かった.重複癌を併発しやすい症例としては多発大腸癌症例が独立因子となっていた(p=0.000).大腸癌術後異時性重複癌症例は96例で重複臓器は胃癌(28.1%),肺癌17例(17.7%)の順で多かった.重複癌発症時期は術後平均5.3年(中間値4.3年)で,胃癌は7.0年(中間値7.2年),肺癌は3.5年(中間値2.6年)であった.考察:大腸癌症例における重複癌の併発は予後の悪化および重複癌死の増加をもたらし,これらを早期発見し対処すべきである.特に,多発大腸癌症例は注意が必要で重複臓器としては胃癌,肺癌である.
索引用語
colorectal cancer, multiple primary cancer, colorectal cancer with other primary cancer
日消外会誌 40: 1557-1564, 2007
別刷請求先
塩澤 学 〒241-0815 横浜市旭区中尾1-1-2 神奈川県立がんセンター消化器外科
受理年月日
2007年2月28日
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