症例報告
小網原発と考えられたガストリノーマの1例
神山 篤史, 柴田 近, 舟山 裕士, 福島 浩平, 高橋 賢一, 上野 達也, 小林 照忠, 木内 誠, 佐々木 巖, 森谷 卓也*
東北大学生体調節外科学分野, 同 病理部*
ガストリノーマの多くはいわゆる‘gastrinoma triangle’に存在し,異所性ガストリノーマはまれである.今回,我々は小網原発と考えられたガストリノーマの症例を経験した.症例は74歳の女性で,2度にわたって十二指腸潰瘍穿孔を繰り返し,幽門側胃切除術を施行された.術後に血清ガストリンの高値を認め,さらにグルカゴン負荷試験で血清ガストリン値の奇異性上昇を認めたためガストリノーマの診断となった.腹部CT,腹部MRIにて残胃小網内に腫瘤を認め,動脈内グルカゴン負荷試験で小網内の腫瘤は左胃動脈を栄養動脈とするガストリノーマと判断し,小網内の腫瘤とともに残胃全摘術を行った.組織学的検討でも腫瘤はガストリン産生腫瘍であった.術中・術後に施行したグルカゴン負荷試験はいずれも陰性であり,術後2年を経過した現在も再発の兆候を認めていない.小網原発と考えられたガストリノーマの診断・治療にグルカゴン負荷試験は有用であった.
索引用語
gastrinoma, glucagon, lesser omentum
日消外会誌 40: 1582-1586, 2007
別刷請求先
柴田 近 〒980-8574 仙台市青葉区星陵町1-1 東北大学生体調節外科
受理年月日
2007年2月28日
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