症例報告
多発内分泌腺腫I型に合併したZollinger-Ellison症候群に多発胃カルチノイドを発症した1例
高橋 直人, 柏木 秀幸, 小村 伸朗, 坪井 一人, 矢永 勝彦
東京慈恵会医科大学外科学講座
我々は十二指腸潰瘍穿孔を契機にZollinger-Ellison症候群(以下,ZES)と診断し,選択的胃迷走神経切離,幽門洞切除術を施行した症例の術後に,腫瘍再発に伴う高酸分泌を認め,それに対してProton pump inhibitorの長期投与が有用であった症例を経験した.しかし,本症例でその11年後,MEN I型合併による残胃のEnterochromaffin-like cell細胞由来カルチノイド腫瘍を生じた.それに対して残胃全摘,膵前面リンパ節摘除,回結腸間置術および右副甲状腺摘出術を施行した.病理組織学的検査免疫染色でガストリン陽性の十二指腸ポリープと膵頭リンパ節転移がみられ,gastrinomaの再発および転移と診断した.多発残胃ポリープはガストリン陰性,GrimeliusおよびChromogranin A染色陽性のカルチノイドであった.残胃ポリープは高ガストリン血症によるECL細胞のカルチノイド化が推測された.最終手術より約9年(初発から約20年)経過した現在ガストリン値は高いながら,遠隔転移なく生存中である.
索引用語
duodenal gastrinoma, multiple endocrine neoplasia, gastric carcinoid
日消外会誌 40: 1893-1897, 2007
別刷請求先
高橋 直人 〒105-8471 港区西新橋3-25-8 東京慈恵会医科大学外科学講座
受理年月日
2007年5月31日
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